「川下りは楽し・余談」   by  別宮 博一

S+@<考える白鳥>

  今年はカヌーを余りやらずに過ごしてしまった。土曜日を90

歳の母のところに出掛けるのに使い、第一・第三日曜の午前中

をカヌーとは無関係な研修に使ったせいもあるが、年々モチベー

ションが低下して来ているのも確かだ。

 11月4日昼過ぎ、久振りに後楽園周辺の旭川で40分程漕い

でみたが、水は未だそれ程冷たくなかった。水位がやたらに低か

ったのは、渇水に加えて、この時季は岡山県庁付近・相生橋川

下の可動堰が開いているので、干潮だったのだろう。流れの幅が

狭くなってしまっており、通常は水面下に隠れている構造が露呈

され、河床の様子が良く分かる。あちこちでライズがあり、岸か

らは茹でたイイダコの様な形のフックを付けて魚を引っ掛けよう

と投げ込んで来る輩がいるので、何処を通ろうかと悩んだりする。

ゴボゴボという音と共に水面に輪を作って、水面下を大きな鯉

やボラの数匹の群れがスーッと通って行くのが見える。

 榊原病院前辺りで鵜が大きな魚を鵜呑みにしようとしている

のが見えた。中々飲み込めず難渋して手間取っているので、私

はそっと接近して行った。何度も何度も苦闘を繰り返していたが、

私が近付いたので、鵜は魚を放り捨てて逃げてしまった。その場

に行って見たが、魚の姿は無く、セーフであった様だ。でも、恐ら

く傷付いているだろうから、間も無く死ぬのだろう。この日、其

処此処で水中に魚の屍骸をいくつも見掛けた。

 水から上がって、カヌーを担いで土手の上の道を歩いていたら、

私が岸に着けて上がって来るのをずっと見ていた私よりかなり年

配と思しき老人が話し掛けて来た。

「あんたも、元気じゃのおー。そのふにゃあ、かりーぃんじゃのお」

「かりぃこたあ、ねえでぇ。〆て16-7キラァ、あるでぇ」と返す。

「ほぉー、そねぇにのおー!元気なもんじゃ!」と言われ、悪い気

はしなかった。ところが、翌朝起きて見ると両肩関節が痛み可動

域が狭まっている。つくづく若くはないと認識させられ、関節は

常々使い続けていないと、直ぐに錆び付いてしまうものだと思

い知らされた。

 さて、関節に絡み特ダネをゲットしているので、ここで披露し

たい。

 私は出勤途上岡山城の堀の傍を通っているので、ここに居る

白鳥を毎日見ている。ある日、白鳥の姿が奇妙なのに気付いた。

片脚が如何見ても変だ! 水に浮いている白鳥の片脚が空中に

在り、白鳥の胴体の後に突き刺さっている様に見える。
   
(写真@AB)

 これは骨折しているに違いないと私は判断した。大変だ!然

るべきルートで善処が必要と考え、取敢えず岡山県庁向かい・

相生橋西詰め辺りの交番に駆け込んだ。

 「そこの堀に居る白鳥の一匹が片脚を骨折しているのを、通り

掛かりに見掛けたので、すみませんが、然るべき所に連絡して対

応して貰って下さい」と頼んだ。こんな事を突然言われた警察官

も当惑気味で、「何処へ連絡したらいいんですか?」と問うので、

「そちらで考えて下さい。岡山城の管理事務所でしょうか?」と

言って私はその場を離れた。その後どうなったか知らないが、翌

日通った時には警察官が白鳥を見ている姿があったが、白鳥の

姿には異変は無かった。あれはナンだったのだろうか。

 この話を妻に話したところ、「あの白鳥は時々あんな格好をす

るみたいよ。人を誑かしているみたい」と驚かない。真偽の程は

定かでないが、確かに苦痛の様子は無かった。私にはあんな格

好を白鳥が自分で得意気にやって退けるとは信じられない。

 ロダンの彫刻「考える人」の姿勢を真似ようとすると、如何な

っているのか俄かには旨くいかないが、この白鳥は脚を組んで何

を考えていたのだろうか。パスカルは「人は考える葦である」と

言っているが、「あれは考える脚である」としておこう。

 
(写真C)


                       (2007/11/08)




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