「川下りは楽し・余談」   by  別宮 博一

G<久し振りの江の川>

 広島県三次市の「江の川カヌー公園さくぎ」で9月23-24日、

「プリヨンカップ」が開催された。これに参加かたがた「江の川」を

下ろうという、「岡山カヌークラブ・清流部」の計画があるのを知

り、私もこれに参加させてもらった。私は23日の江の川ツーリン

グだけで満足であり、所用もあり、プリヨンカップには参加せず

翌日午前中に早々と帰途に就いた。往復の車中では、中国地

方の5つの川のテーマで綴った作編曲・神山純一氏のCD「五川

譜」、特に「江の川のテーマ」をリピートで聴きながら、江の川に

浸り切った。
(写真A)

 江の川は広島県三次盆地で3つの川が合流し、島根県江津

市で日本海に流れ込む中国地方切っての大河で、その中流は高

梁川や旭川と違って瀬が沢山あり、夫々が長く波が大きく豪快

で、私にとっては魅力的な良い川だが、何せ岡山から遠いのが

難点だ。新興の「江の川カヌー公園さくぎ」へ来たのは初めてで

あるが、分かり易いカヌー型の特大の標識があるので迷う事は

無い。
(写真B)

 私が江の川のこの辺りを下るのは、今回が6回目である。今

回は「江の川カヌー公園さくぎ」からJR三江線「石見都賀」駅付

近の「荷越瀬」(ニコセのせ)のすぐ川下の「道の駅・グリーンロー

ド大和」までの約20キロのロング・ツーリングである。下って見た

感想からは、「カヌー公園さくぎ」から「両国橋」までは、やたら

に瀞場が長くてウンザリさせられ、蛇足と言う感じである。ヤッ

パリ、定番の「両国橋」スタートが、距離も適当であり、イイトコド

リで無駄がなくて良いと思う。
(写真C)

 この日意外であったのは、釣り師が多いことだ。岡山にいると

鮎はもういないものとツイ思ってしまうが、「江の川では鮎が釣

れるんだ!」と思い知らされた。昔の高梁川中流の様に、どの瀬

にも大抵複数の釣り師が両側にいる。楽しいコース取りで気侭

に通れないので、遠慮勝ちにそっと通ったり、背後の詰まらない

流れを通ったりで、残念ながら、川下りの華とも言うべき瀬の楽

しさの、かなりの部分が削がれてしまう。

 瀬は色々あるが、ハイライトは何と言っても、水路が狭まった

上に落差が大きく、大波の立っている「ブタ小屋の瀬」と「荷越

瀬」(ニコセの瀬)であるが、この2つの瀬には釣り師はいなかっ

た。

 「ブタ小屋の瀬」では、釣り師のかわりにスラローマーが激しい

波の上にポールを吊るして旗門を作り、練習に励んでいたが、

我々の為に練習を一時中止して瀬を空けてくれた。さすがは同

好の士である。この日の水位は私の体感上、今迄で一番高かっ

たので、今迄になく特大の激しい波に揉まれ、水飛沫で視野が

定かでない中で、旗門のポールが顔面右前でヘルメットにガツン

と当ったが、大きなスリルを味わいながらもスムーズに突破した。
(写真D)
(写真E)

 「ニコセの瀬」では瀬の様子が嘗ての姿とは様変わりしており、

大増水がある度に少しずつ変化を繰り返している様に感じられ

る。私が最後に下ったのは恐らく1999年頃だったと思うが、前

年かその年かに大きな被害をもたらした台風何号だったかの後

であった。大増水のため、流れの左端にあった写真Eのオリジナ

ルのニコセの瀬は死んでしまっており、右川下側へかなり離れて

新しいニコセの瀬が出来ていたと記憶している。しかも、割合素

直な流れの状況だったはずだ。
(写真F)

 今年のニコセはこれとは異なり、瀬が随分左側へ移動してい

る感じで、オリジナルの位置の直ぐ右隣といった印象で写真Fの

真ん中の部分の感じである。意を決して突入した途端、落ちる

と言う感じがする。下を向いた視野の中で右側と左側から異な

る高さで横から大波が覆い被さって来る。ダン、ダン、ダンと衝

撃を感じて落ちて行く。頭の上から覆い被さる水飛沫の中で視

野は真っ白。しかし、バランスを崩すことも無く、難なく突破し

た。大満足!因みに、8人挑んで4人沈している。(写真GH)
(写真G)
(写真H)

 <川流>   ブタの瀬も ニコセも楽し 江の川

 ニコセが済んだら、もう後は漕ぐ手はない。さっさと上陸して

元「大和村」の「潮温泉」へ移動してサッパリすると言うのが定番

だ。嘗ては島根県の「大和村」が、村最大のイヴェントとして、こ

の辺りのカヌーツーリングを毎年開催していた。そして村民挙げ

て歓待してくれていた。その当時、隣村の広島県の作木村はカ

ヌーに対しては、はむしろ冷たかったという印象を持っている。こ

の当時大和村のカヌーの胴元であった人物と偶然、この潮温泉

で出遭った。この人とは何故か此処でよく出遭う。(拙著「川下り

は楽し」p.112)

 すれ違い様に「ヨーッ!久し振り!」と思わず声を掛け合った

彼によれば、大和村は川下隣の邑智町に合併し、カヌー関連装

備は「カヌー博物館」やB&Gのある旧邑智町側に統合され、今

や旧大和村にはカヌーのカの字もないそうで、彼自身もカヌー

には一切関係していないという。寂しい限りだ。大和からカヌー

ツーリングの案内がプッツリ来なくなった訳が判った。町村合併

はこんな形でも影の部分を露している。カヌーでは新興の川上

隣の作木村でも同様らしい。村の一大イベントで村挙げての歓

待があったプリンカップであったが、合併して三次市の一部とな

り、昨年から三次市のイヴェントの一つに過ぎなくなり、自治体

の支援が弱まった為か、宴会の歓待度がそれ以前に比べ低調で

期待はずれと参加者から不評で、かなりの連中が今年は夜の交

流会には参加しないと言う。「そこまで料理に拘るか」と飲み食

いに拘りの無い私にはピンと来ない部分ではある。

 <川流>   合併で カヌーの村も 様変わり

 宿泊は、廃校になった「作木第一小学校」跡を改装・整備した

「自治交流センター・ポテンシャル」で一泊千円の自炊で雑魚寝

である。多くの参加者がここに集まり、ここで自主宴会が盛り上

がった。もくず蟹を沢山持って現れた仙人風の老人がいたが、彼
         (注釈:津和野町高津川の川蟹。9月に子を持ち上海蟹よりも美味である) (日原カヌークラブ宮島会長のこと)

の姿を後日TV番組「銭形金太郎」で目撃し、彼は47才と知り、

腰を抜さんばかりに驚いた。テッキリ私より年配だと思い込んで

いたのに。私は彼に蟹の食い方が悪いと叱られましたよ。

 <川流>  これ旨い! 皆がむしゃぶる もくず蟹

 翌日のプリヨンカップは開会式だけ参加して私は午前中に

帰途に就いたが、家に辿り着くや、起きておれなくなり爆睡して

しまった。その間に、仲間は二人も優勝と言う快挙を成した上、

良い買い物もして来たと聞いている。おめでとう!
(写真I)

                      (2006/10/5)




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