「川下りは楽し・余談」   by  別宮 博一

F<吉井川あれこれ>

 9月3日(日)に吉井川下流の瀬戸町・岡山国体レーシングカヌ

ー会場跡で『第1回岡山カヌーフェスタ』が開催された。これは、

カヌーに1人でも多くの人に親しんで貰えるように、そういう場

を作ろうと云う発想から企画され、手探りで運営されたイヴェン

トであったと私は理解している。口コミ以外の宣伝が殆どされて

いない中で、一体誰が来てくれるのか、何人来そうなのか等々

不確定要素ばかりで、関係者には大変な苦労があった事と思う。

 幸いにも好天に恵まれ、カヌー仲間もかなり集まり、待望の初

心者の参加もかなりあったようだ。岡山カヌークラブ会員が協力

して運営したもので、準備や進行は万全ではなかったものの、実

に楽しい有意義なイヴェントであった。

 特に、赤磐消防署員によるレ「スキュー講習会」では、人工呼

吸・心臓マッサージ・AEDの実習は勿論、カヌーの場を想定した

真に迫った質問も相次ぎ、皆真剣であった。

 「試乗会」では、皆が持ち寄ったアリトアラユル種類の約40艇

が総て試乗艇として提供され、どの艇にでも好きに乗れるとい

う、これからカヌーをやって見ようとか思う人には、めったに無い

非常に良いチャンスであったと思われる。

 このイヴェントは、これからも毎年開催される予定なので、軽

い気持ちで多くの人に是非とも試しに乗りに来て頂きたいもの

である。そしてカヌーとは如何なるものか体験し、味わって頂き

たいと願っている。

 午後からは参加者が「高梁川」「旭川」「吉井川」の3チームに

別れて「ブイ・スラローム」「借り物競争」「ドラゴン・レース」「風船

ドッグファイト」などに興じた。私も幾つかの競技に出場したが、

最後の「風船ドッグファイト」では『これが最後のゲームで、自分

以外は全部敵じゃー!』という某氏のアジテーションを鵜呑みに

して、多数の味方の風船を割ってしまい、意気揚々と「高梁川」

唯一の生き残りとなり、チームを敗退させてしまい、ヒンシュク

を買ってしまった。

 さて、話は変わるが、準備の打ち合わせ会の中で「このイヴェ

ントの前日の朝、吉井川を下ろうよ」という声が上がったのを知

り、私はチャンス到来と認識した。実は、私は高梁川・旭川は数

え切れないくらい下りまくっているが、吉井川を下ったことは今

迄全く無かった。

 如何してそんな事になったかと云うと、先ず、土地鑑が全く無

いことが大きい。それに、カヌーを始めて間もない頃、車で吉井

川を偵察して見て、落差の大きい堰がやたらに多く、川への出

入りが難しいと云う印象を持ってしまったことも大きい。しかし

何と言っても一番大きいのは、カヌーの神様・野田知佑氏の名著

「日本の川を旅する」を読んでの思い込みである。



  彼によれば、吉井川はボロクソである。即ち、「川は眺めるも

のではなくて、飛び込むもの、泳ぐもの、潜って魚をふん掴まえ

るもの」なのだそうで、「そういう気持ちが起らない川は『ダメな

川』『汚い川』」ということになり、吉井川はこれに当たるというの

である。「水の上で水に渇く」とも評している。

 今回下ったのは岡山カヌークラブ・清流部の面々総勢6人で、

中流の周匝橋−佐伯橋間約13キロである。川に漕ぎ出した

途端、ほのかな異臭を感じ、上陸するまで続いた。水中にもプ

ラスチックのゴミが流れているのも見え、概ね野田氏の四半世

紀前の記述に納得である。

 但し、一点、「苦木の瀬」という吉井川随一の絶好の瀬がある

が、これは実に良かった。

 流れが右に傾いて右岸にぶつかり、右岸を擦りながら波立っ

て進む、長くて落差の大きい、私にはチャレンジングな瀬だった。

吉井川の高瀬舟時代の難所で、「舟通し」の為の直進の水路も

造られており、野田氏はフォールディングカヤックであったせいも

あるかも知れないが、易しい方の船通しを通っている。

 それにしても、「日本の川を旅する」を久し振りに開けて見た

が、野田氏の文章は実に素晴らしいとつくづく感じた。それと同

時に、ラインマーカーが一杯付いているのを見て、私の過去の

真剣さにも驚いてしまう。こんなパロディーが目に付いた。脱

帽!

   雨ニモ負ケル、風ニモ負ケル

   アチラノ娘ガ来イトイエバ オロオロ行キ

   コチラノ婆サンガ来イトイエバ ヨロヨロ行キ

   天気ガ良イト言ッテハ飲ミ

   天気ガ悪イト言ッテハ飲ミ

   毎日 沢山ノオ酒ヲ飲ミ

   ソシテ 今日モ酔ッパラッテ寝ル

   君ハ コンナ人ニナッテハイケナイ

 ナンダカ 岡山カヌークラブ清流部ハ コンナ輩ノ巣窟ノ様ナ

気ガスル!

                      (2006/09/16)



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