「川下りは楽し・余談」   by  別宮 博一

E<鵜>

  7月7日-8日に岡山で「日本病院学会」が開催された。私

もこれに参加したが、特別講演が面白かった。沢山の特別講演

があったが、私が最も楽しんだのは、北海道・旭川市の「旭山動

物園」園長・小菅正夫氏の講演「新しい動物園のあり方を実践し

て」である。(写真@小菅正夫氏))



 学校の夏休みが始まる前頃から旭川市の旭山動物園がTV

や新聞で採り上げられる機会が多くなっており、御覧になった方

も多いかと思う。珍獣は何も居ないにもかかわらず、今や入場

者数日本一、海外からもツアー客が押し掛ける日本最北の動

物園である。この動物園が、入場者数低迷による廃園の危機の

中で発想の転換をして、動物の特徴的姿をより近くで見せる工

夫を積み上げて編み出した《行動展示》によって成功を収めた

顛末を、画像や映像を提示しながらの、1時間45分にわたる、

聴衆を飽かせない、眼からウロコの、楽しくも素晴らしく、示唆

に富む講演であった。(写真A小菅正夫氏著書表紙)



 ペンギンは水中での行動に特化して進化した鳥である。その

代わり飛べなくなった。しかし、このペンギンの水中の行動を旭

山動物園で見ると、あれはまさに「水中を飛んでいる」姿だと頷

けてしまう。

 さて、一昔前までは川で鮎をはじめ魚が色々捕れていたが、

最近はサッパリ魚が少なくなってしまった様で、川下りに際し釣り

師に出会うことも、私の行動範囲では少なくなって来ている。高

梁川と成羽川の合流する高梁市・落合から川下でも、私がカヌ

ーを始めた1990年頃には、鮎漁解禁後はカヌーで下るのを憚

らざるを得ない程多くの釣り師が居たが、今は殆ど姿を見な

い。

 鮎などが居なくなったのは、鵜やブラック・バスが犯人と目さ

れている。昨年高梁川・石庭を秋岡氏と二人で下っていると、川

辺では見かけたことの無い揃いの装束の男達が岸辺に適当間

隔で並んでいるのに出くわした。銃をもっている。時に「パン、パ

ン」と散弾を撃っている。鵜退治を自治体から委嘱された猟友

会の面々と判った。

 鵜は保護鳥なので、幾ら悪い奴らでも勝手に退治は出来ない

のだそうだ。普段は沢山の鵜が群れを成し、その振る舞いは、さ

ながら水辺の黒いギャングの様であるが、己が銃で狙われてい

るのにその場に留まっているほど馬鹿な鵜ではない。鵜の姿なん

か無くなってしまっている。

 「川ぁ下りょうて、撃たれちゃぁ、かなわんなあ」とぼやいている

と、「トランシーバーで、『けぇからカヌーが下るけぇ、撃つな』云う

て皆に言うてぇたけぇ、早よう通ってくれぇ」とリーダー格が通して

くれた。

 鵜が泳いでいる様子を見ていて気が付いたのであるが、普通

の水鳥に比べると、浮いてはいるが胴体が半分以上沈んでいる。

丸でスクウォート艇みたいだ。鵜が潜ると身体は完全に水没して

しまい、かなり長時間潜水して動き回り、遠くの方で水面に出て

来る。水中に潜っている時の姿は見えないが、羽根の抵抗が大

きいのでペンギン程は速くないにしても、水中を飛んでいるに違

いない。また、空中を飛んでいる姿を見ると、羽が細くて空気を

効率的に羽ばたいていないと見えて、飛び方はやや下手な気が

する。こう見てみると、水中と空中の両方飛べる様に特化した

姿なのだと納得できる。ペンギンほど水中に特化してしっまては

おらず、水中も水上も陸上も空中も自由に行動出来るとは、誠

に羨ましい限りである。

 生息地の問題が無ければ、水中も空中も飛ぶこの鵜の姿を

旭山動物園に是非とも行動展示して貰いたいものである。

                      (2006/08/16)



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