「川下りは楽し・余談」   by  別宮 博一

B<カヌーシーズン全開>

 4月初め、「一寸花見を」と後楽園周辺を30分程漕いだところ、その時

は如何と云うことは無かったが、翌日になってみると、不調であった右肩

関節が一段と不調になっており、痛くて腕組みが出来ない上に、痛くて可

動閾が狭まり、右腕が後ろに廻らなくなってしまい、情けないことに、右

手で尻が拭けなくなってしまった。これには些か参ってしまった。その時に

は痛くなくても、不調の関節には負荷を懸けてはいけないのだなと判断

して、その後はカヌーを謹慎していた。 しかしながら、ゴールデンウイー

クが近付くにつれて、そうばっかりも言っておれない気分になり、色々計画

を立てた。

 先ず、何時もの医療関係者ばかりの高梁川田舎倶楽部の面々に声を掛

けて、川下りを計画した。なにしろ、66歳を筆頭に高齢主体の下手糞に、

若くて美しくて可愛いいのが取り柄で、これまた下手糞な女の子を、いわ

ばアペティタイザ―として盛り付けた、心許無い9名の一団である(内1

人は腰痛のため陸上支援をすると言い、写真を撮ってくれた)。万一の場

合、岸まで引き上げることが出来たら、医療関係者ばかりなので、何とか

打つ手はあり得るとは思うが、岸に引き上げる迄が我々だけでは覚束な

い。心の支えは最高齢者の娘婿で、カヌーの達人の歯医者さんが参加し

てくれていることである。

 
  塩田抜け写真

 予定していた5月3日は、幸運にも心も浮き立つ雲一つ無い快晴であっ

た。御津文化センターのところの河川敷から中牧の河原までの短区間を、

この様な一団で久し振りにガキの様に大はしゃぎしながら下ったのであ

る。

  川に出て先ず気付いたのは、右肩が痛いので右腕が後ろに回せない

ため、スプレー・カバーを自分で取り付けることが出来ないことである。こ

れには参ってしまった。幸いにも漕ぐこと自体には支障は無かった。しかし

ながら、もう自分自身の事だけで手一杯で、人の事に構う余裕が無くな

っているのをひしひしと感じ、もう新しく人を川へ誘うのは考え物だなと

云う思いがして、些か寂しい。

 
  全艇写真

 中牧の河原にはかなり人が来ており、アウトドア装備を広げて賑わって

いた。そんな中に流れて来て上陸した我々に羨望の眼差しが集まってい

るのを心地良く感じながら、河原に坐り込んで楽しく食事をし、暫し談笑

して解散した。

 5月5日には岩国の米軍基地開放のイヴェントに行ってみた。これはゴ

ールデンウイークに入ってから新聞広告を見て急に決めたものである。空

への憧れは子供の頃からズットあったが、物凄い交通渋滞があるのは、

「錦川下り」に行く時に巻き込まれた2度のニガイ体験で承知していたの

で、これを見に行くと云う発想は起きなかったのであるが、新聞広告で両

備バスのツアーが何種類か用意されているのを見て、空への思いが突然

膨らんだのである。妻も行くと言う。例年20万人が押し掛けるという1

日限りのビッグ・イヴェントを、基地ゲート開門と同時に入場して十分堪能

するために、岡山の林原駐車場を前夜21時30分に出発する車中泊の

ツアーに即申し込んでしまった。本気である。インターネットで情報を漁

って見ると、「自家用車では来るな」と盛んに警告を発している。

 宮島サービスエリアで仮眠。基地内の駐車場の5時半開門に合わせて

山陽自動車道岩国出口をスムーズに出たが、間もなく午前4時半頃から

渋滞に入り、5時前頃から渋滞が動かなくなった。何と8時前までの3時

間に100メートル程進んだだけである。7時半ごろ、自家用車の駐車場

は満車になっていると言う情報あり。バス用の駐車場は別個にあるが、入

れない自家用車が動かないので一緒に並んでいるバスも動けないと言う

バカバカしい事態が続く。「9時の開門に間に合う様に、歩くぞ!」と7時

半頃から私が声を上げ始めた。結局、車列からバスごと離れてJR岩国

駅に行き下車して、特定路線を確保された基地へのシャトルバスに乗る

のが一番速いと判明。これを実行し、結局基地ゲートに8時45分頃着い

たが、既にゲートは開いていた。

 

米国への入国と同様に荷物のチェックがある。入場無料。まあ、予定通

りの時間に入場出来たという訳だ。後で聞いた所では、我々のバスが基

地の駐車場に入れたのは11時だったそうな。今年は人出が例年になく

多く、30万人であったと云う。愛地球博の最高の人出の日以上だ。でも、

全て屋外展示であり、展示品は飛行機で巨大で何処からでも見えるし、

航空ショウは天空で行われるので、見るために並んで待つ事は全く無い。

一日中空を向いていたので顔が随分日に焼けてしまった。

    

私自身の新鮮な発見は、ジェット機が接近して来る時に音がしないこと

である。従って何処から来るか判らない。みんな何処からくるかと探して

いる。「アッ来た!」と誰かが指さす。その方向を見ると小さな機影があり、

音もなくドンドン大きくなって行き、轟音を立てて目の前を通り過ぎて旋

回し、噴射口がこちらを向いている間は、バリバリという轟音で体が揺さ

ぶられ、物凄い迫力に圧倒され驚嘆させられるが、指向性があり、機体

の向きが変わるとプッ音がと消える。音よりも速く飛ぶというのはこんな

感じになるのかと認識した次第で感動した。それにしても住民として

日々の生活中にこの轟音があるのはカナワンナアと思う。国を衛ると云

うことは大変なことなのだ。

 

(余計なオセッカイではありますが、このイヴェントに参加される時は、

決して自家用車で行こうなどと考えず、JRとシャトルバスを利用する計

画をお立てになることをお薦めします!)

 5月7日は建部のB&Gの旭川下りに仲間2人を誘い3人で参加した。

この川下りは、従来毎年この時期にクローズドで行なわれて来ていた。私

は過去何度も飛び入り参加させて貰っており、岡山・後楽園まで40キロ

程を何回か下っている(「川下りは楽し」p.52−57参照)。最近は年々

川下りの区間・距離が短縮され面白味が段段減って来ていた。今回から

オープンになり、参加要請が岡山カヌークラブにあった旨ホームページに

掲示されていたので、参加者が多いのかと思ったが、総勢22名のこじん

まりとしたものであった。今回は、昨年の岡山国体で優勝した依田夫妻に

エスコートされており、建部のスポーツセンターから小倉橋までとかなり

の距離に延長されており、天気はパッとしなかったが、出発時点には川面

にガスがかかり、独特の雰囲気がかもし出されていた。流れに色々変化

があり、実に楽しかった。昔はこの辺りも何度も下ったが、ここのところ何

年も此処を下っておらず、新鮮な感動があった。依田氏をして「今日は泳

ぐ人が多いなー」と言わしめた程に、「沈」する人も次々あり、寒い中誠に

気の毒であった。

 途中、八幡温泉対岸の河川敷へ上陸してゴミ拾い」を行っている。

 今回の川下りは私個人にとっては、別の意味で意義深いものであった。

既に述べた様に、右肩不調で右手が後ろへ回らず、スプレー・カバーが自

分で取り付け得ない状態で困っていた。どの辺たりであったであろうか、

一緒に参加していた赤いファルトボートが、水面に見え隠れしていた幅広

の岩に乗り上げ、貼りついて動けなくなった。そばに行って手助けしていた

らファルトボートは岩からはずれたが、私の艇が貼りついてしまった。

流水圧に押されて艇が傾いたため、未だ冷たい水に濡れるのがイヤで

あったこともあり、水深が浅かったため、川上側に右手をついてしまった。

痛い肩の側である。この状況のまま動かなくなってしまった。これはヤバ

イ状況である。依田夫人が接近して来て、艇を前へ出せと言う。色々身

体を動かしていたら艇が少しずつ前方に動き、相対的に川底についてい

る右手の位置は身体の後方へ移動していた。この姿勢ままでの努力の甲

斐あって、約5分の奮闘の結果旨くはずれた。この間右肩が痛いとは感じ

なかった。今迄右腕はこの位置には痛くてとても持って行けなかったはず

である。ヤバサの中で痛みは飛んでいたのであろう。右肩関節の可動域

が大いに拡大しており、独力でスプレーカバーを取り付けられるようにな

っているのに気付いて感動!現在、右肩関節の可動域の制限は未だあり、

痛みもあるが、以前に比べ随分良い状態である。依田夫人の声に従って

得た思い掛けないオマケ効果を、有難く噛み締めている。

 5月21日の岡山カヌークラブの川下りにも参加する積もりでいる。鮎

解禁前のこの時季、大いにカヌーを楽しみましょう!

 

 
  依田夫妻と共に 著者近影

                                (5/16/2006)



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