「川下りは楽し・余談」   by  別宮 博一

69<「記念碑《漕》」>

 
 

 「岡山城・後楽園カヌー駅伝大会」が大成功裏に終わった。こん

な結果になろうとは誰も予想していなかったのではないだろうか。

何しろ初めての事なので、何から如何手を着けたら良いのやら全く

分らない中、実行委員長の本谷氏を中心に、降りかかる多少の火の

粉は甘んじて受けようと腹を括った一握りのメンバーが集い、本田

大三郎氏はじめ多くの方々の指導や色々の形での支援を受けながら、

もがき苦しんだ末に為し得たものだ。その中でも最大の力になった

のは、多くの皆さんにエントリーして頂いた事で、遅ればせながら

参加して下さった皆様にお礼を申し上げます。

 さて、私自身に就いて言えば、大会終了後は、如何したわけかモ

チベーションが下がってしまい、何もする気がせず、カヌーを漕ぐ

事も無く、「川下りは楽し・余談」を更新する事もせず、悶々と過ご

してしまった。この間、皆既日食や太陽面金星通過の素晴らしい天

体ショーがあったかと思えば、今は3流政治ショーの最中である。

その中で「新しい素粒子《ヒッグス粒子》の発見」と言うビッグ・

ニュースで衝撃を受け、目が覚めた感じである。

 「岡山城・後楽園カヌー駅伝大会」Aクラスのコース内の、相生

橋から北(川上)の部分は嘗て「岡山大学医学部・学内レガッタ」

がナックル・フォーの5人1チームで開催されていた区間である。

私はこれに学生時代も卒業後も、長きに渡り毎年仲間と共に参加し

ていた。

 残念な事に、練習中に相生橋川下の堰に艇が衝突して、学生が死

亡すると言う不幸な事故があり、中止されてしまった。その後、遥

か川下の三蟠の艇庫付近に会場を移して再開されて続いていたが、

旭川のこの部分は航路であるため、船舶の波に邪魔され困っていた。

岡山国体を機に旭川・放水路である百關河口部近傍の九蟠にボー

トコース・艇庫が整備されたので、以後ここに会場を移して現在に

至っている。この事に就いては、岡山県漕艇協会理事で当ラブ会員

のアーネスト・秋岡氏が詳しい。

 もっと昔の話になると、岡山大学の前身である「第六高等学校」

の艇友会(ボート部)の練習が岡山城を仰ぐこの場所で行われてい

た。後楽園側の旭川河畔で岡山城を仰ぎ見る場所に、「漕」の大きな

一文字を刻んだ石碑が建てられている。

 
 これは艇友会の有志が、若き日の苦難と栄光の記憶を残そうと、

昭和45年に建てたものである。裏面(川側の面)に蘊蓄が刻まれ

ているが、これが甚だ読み辛い。これを何とか判読して見た。(縦書

き10行であるが、ここでは横書きで記す。)

 
    烏城景を涵し古樹緑を

    湛える旭水の畔 かつ

    てこの清流に軽舸を駆

    り精進を重ねた若き春

    秋を想い艇友四六七 こ

    こに碑を建て過ぎし日

    の忍苦と栄光を永遠に

    伝う

     昭和四十五年十一月七日

        第六高等学校艇友会

  それにしても、彫られた「漕」の文字に入れられた白い塗料は

文字の縁から垂れているし、石碑の上記刻面の白化粧は異様である。

近年になって何者かが、刻面全体に白色の塗料をデタラメに塗りつ

けているとしか思えない哀れな姿である。読み難いので、恐らくは

拓本の採り方を知らない輩が、黒い紙に白のバックで黒の裏文字を

写し取ったのであろうか。ボートに興味の無い者は、わざわざこん

な事はしないだろう。

  

  それはともかく、この碑が建てられて42年目の今年、艇と漕

ぐ向きは異なるが、同じ様に水上を「漕ぐ」カヌー・レースが、こ

の碑の前で行われたのは実に感慨深い。

最近2作品

  * 内外で 鳩が囀りゃ 朱鷺が泣き

  * 気に入らン 答えはノーだの お騒がせ

              俺の方から 離縁状切る



                        佳奴

                 (2012年7月5日) 


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