「川下りは楽し・余談」   by  別宮 博一

62 <「旭川カヌー・ツーリング」>


 
   (写真@藤沢道太氏提供)

 岡山カヌークラブ恒例の春の「旭川カヌー・ツリング」は5月2

2日の予定だったが、この頃の天候がパッとせず、この朝7時に目

覚めて見ると、ザーザー降りであった。「こりゃぁ、カヌーツ―リン

グぁ、中止じゃな」と、高を括りつゝ、事務局・妹尾氏に電話した

ところ、彼の周辺は降っていないと言う。「岡山市内でも色々か」

と思いつつも、装備を整えようか如何かと逡巡したが、ヤル気は失せ

たまま形だけは整えて、小雨の中を新大原橋直下の河原へ向かう。

  着いて見ると橋の下で雨を避けつつも、7−8人がヤル気満満で

待機している。水は微濁で水位はいつもより大分高く、橋脚のかな

り東側まで流れになっている。そうこうする中に次第に小降りにな

り、集合の10時には雨は止んでしまった。こうなると闘志はムク

ムクと湧き上がって来て、「行けよ!進めよ!」となってしまった。

 青い空が無いので楽しい気分が半減するのが残念ではあるが、そ

の分暑くないので良しとする。出足を挫かれた条件下、参加を断念

した方々も多かったであろうが、いつもの金川の出発地点に集まっ

たのは、女性は1人で寂しかったが総勢16人で、初顔もあり、全

員1人艇だった。新ブランドの姫路の小さな会社製の中々良く出来

たフォールディング・カヤックの新艇もあった。

 出発した途端に沈した1艇があったが、思い掛けない場所での事

で、どうなって沈したのか想像は出来るが、瞬間を見た者は少い。

いつもになく水位が高目で流れが速く、楽しい楽しい川下りだった。

 
  (写真A藤沢道太氏提供)

 この日の様子は、山陽新聞の「集い」欄に、既に事務局より投稿

済みで、写真と共に掲載予定であるが、2−3ヶ月待ちの由。

 さて、話は変わるが、先日関東在住の親籍の者が岡山を通る便が

あるので、岡山に寄るから話がしたいと言ってきた。元気溌剌の7

9歳の彼がチェックインしたホテル直近の居酒屋で楽しくやった後、

カラオケに行こうと言う。

 嘗て、職場の宴会の2次会はカラオケ・ボックスになだれ込んで

大騒ぎをすると言うのが定番であった一昔以来、私はカラオケには

行ったことが無い。彼はカラオケ・ボックスはダメで、他の客が4

−5人居る方が良いと言う。私には此処の所が良く理解出来なかっ

た。今度もホテル直近のビル2階カラオケに入った。運良くカラオ

ケ・ボックスではなかったが、先客は誰も居らず、電飾のステージ

に向けてゆったりと30席ほどが並んだ大広間である。ここに2人

だけで座っているのは、私にはいささか居心地が悪い。79歳の遠

来の老人と69歳の私と76歳のマスターの3老人だけなのだ。

 マスターによれば、此の頃は夜はこんなもので、客は昼間来るの

だそうである。老人は「他に誰も居ないのが残念だなー」と何度も

言う。中々歌いそうにないので仕方なく私が老人に敬意を表して「憧

れのハワイ航路」と「リンゴの唄」を続けて歌ったところ、「あんた、

けっこう歌うじゃないか」と、おもむろに立ちあがり、曲は何だっ

たか忘れたが1曲歌った。これが巧い。すかさずマスターが「お客

さん、この曲をこれだけに歌われると言うことは、相当授業料を払

らってられますね!」と入れる。ここら辺りからは上級者の対話の

楽しみの世界である。

 「カラオケ・ボックスはダメ」と言う意味合いを私はやっと理解出

来た思いである。カラオケ上級者は、いわば「他流試合」に挑み、「驚

くなよ!」の意気込みで他人に聴かせ、「どんなもんだい」と内心思

いつつ互いに褒め合って、自尊心をくすぐられながら楽しく過ごす

と言う「魔力」にハマっているのだと理解した。

 老人がマスターに対し「あなたも、こういう仕事をしているんだ

から、相当歌えるんでしょう?1曲歌いなさいよ」と誘うが、「私は

歌を聴くのは好きなんですが、歌う方は出来ないんですよ」といな

す。暫くして再度誘うと、「それでは、巧くありませんが、お言葉に

甘えて歌わせて頂きます。私が歌いますのは、バリバリの演歌です」

と、私の知らない曲を情感込めて歌い上げたが、これは実に巧かっ

た。老人はこれを褒めそやすのである。実に平和な世界だ。

 こういうレベルの世界では音痴など有り得ないのだろうが、私の

知っているカラオケ・ボックス時代には、歌おうとしない音痴を皆

で支え合って何んとか歌わせたりもしたが、大外れの音痴でも堂々

とやるのもいた。中には握ったマイクを放さない音痴がいたりして、

仲間ながらウンザリで困ったものである。音痴は自分の音程が外れ

ていることが自覚出来ないので、止めさせるのが難しい。近頃は「N

HK素人のど自慢」でも、多少外れているのはよくあるが、響き渡

る鐘一つは滅多にない。実社会では鐘は如何鳴っているのだろう

か?

≪川流≫ 声会に 音痴しゃしゃり出 鐘一つ   佳奴




                 (平成23年6月17日) 


前のコラムにジャンプ

@ のコラム   A のコラム   B のコラム   C のコラム

D のコラム   E のコラム   F のコラム   G のコラム

H のコラム   I のコラム   J のコラム   K のコラム

L のコラム   M のコラム   N のコラム   O のコラム

P のコラム   Q のコラム   R のコラム   S のコラム

21のコラム   22のコラム   23のコラム   24のコラム

25のコラム   26のコラム   27のコラム   28のコラム

29のコラム   30のコラム   31のコラム   32のコラム

33のコラム   34のコラム   35のコラム   36のコラム

37のコラム   38のコラム   39のコラム   40のコラム

41のコラム   42のコラム   43のコラム   44のコラム

45のコラム   46のコラム   47のコラム   48のコラム

49のコラム   50のコラム   51のコラム   52のコラム

53のコラム   54のコラム   55のコラム   56のコラム

57のコラム   58のコラム   59のコラム   60のコラム

 

inserted by FC2 system